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日本経営者新聞 No.56

第7回アフリカ開発会議(TICAD)公式サイドイベント

アライアンス・フォーラム主催アフリカ・パートナーシップ会議


8月29日、パシフィコ横浜にて、第7回アフリカ開発 会議の公式プログラムとしてアライアンスフォーラム 主催アフリカ・パートナーシップ会議が開かれた。 テーマは「豊かな未来へ向けたアフリカと日本のパート ナーシップ」

 財団代表を務める原丈人氏が、「ザンビア大統領 顧問、国連政府間機関特命全権大使を経験してアフ リカ市民の立場から本物のSDGsとESGとは何か」 と題して基調講演を行った。

 ESGとは、環境(Environment)、社会(Society)、 企業統治(Governance)の3つを指し、これらの課題 に優れた取り組みをする企業への投資を促す仕組みで ある。2006年に国連のアナン事務総長が機関投資 家に対してESGを投資プロセスに組み入れる「責任 投資原則」を提唱したことで広まった。

 SDGsは、15年に国連が採択した「持続可能な開発 のための2030アジェンダ」に記載された人類の健康 問題や人権保護、資源保護など17の目標と169の 具体策からなっており、先進国と民間企業を主体的 に取り組むことが求められている。

 原丈人代表は、「公益資本主義」の考え方こそが 今世紀の資本主義の根本理念となるべきだと主張し てきた。公益資本主義では、私たちおよび私たちの 子孫の経済的および精神的な豊かさを「公益」と定 義づけている。そこで「会社」は、社会の公器とし て、事業を通じて社員・顧客・仕入先・地域社会・ 地球といったすべての社中に貢献することにより企業 価値を上げ、その結果として株主にも利益をもたら すべきと考えている。

 今日では、公益を重要視することはますます重要 になった。国家をしのぐ規模のグローバル企業がいくつ も台頭しているからだ。

 国家の歳入と企業売上の上位100を並べてみると、 00年時点では国家が49、企業が51と半数ずつ分け合っ ていたが、15年には企業が69も含まれ、世界における 企業の存在感や影響力が高まっている。

 この状況において、企業が社中全体に利益の分配を することなく、株主のみの短期利益を求めると、大 きな株価連動報酬をもらったトップ経営者やファンド 経営者などを含んだ「持てる者」に富が集中し、格 差が拡大してしまう。中長期的に考えると、所得格 差の拡大は経済成長に悪影響を与える。

 それを踏まえると、ESG投資の「G」では大きな 問題があると言わざるを得ない。問題は大きくわけ ると3つある。

 第一の問題は、「会社は株主のもの」だという「株 主資本主義」を信じ込み、経営者は、株主価値を 最大化することが最も重要な目的だとまっしぐらに 追求している。軒並み株主配当と自社株買いに、利 益の100%以上を費やしており、株主にだけ利益を 分配している。

 第二の問題は、企業の持続的成長と中長期的な投 資を促すはずのESG投資も、短期志向に陥らざるを 得ないことだ。なぜならば、IRR(内部収益率)を 使って投資ファンドの収益率を測る限り、同じ金額の リターンを上げた場合は、機関が短いほどIRRの数 字が高くなるからだ。IRRが高ければファンドマネー ジャーより多くのボーナスをもらえ、投機資金も集 まる。投機は、必ずバブルをつくり、バブルは必ず 崩壊する。

 「G」の第三の問題を例を挙げながら説明する。実 際に米国大手ハンバーガーフランチャイズでは、食品の 安全性という顧客に対する付加価値を下げることで、 経費を削減し営業利益を上げ、結果としてROEを 上げることをしてきた。株価は上がり、経済新聞で はほめそやされてきたが、行き過ぎたことで食品事故 が起き、不買運動に繋がった。結果として株価は下 がった。ESGの「G」のあるべき姿を大きく見直さな いことには経済成長率が上がろうと、営業利益が過去 最高になろうと、株価が上がろうと、富の二極分化 は進み中間層は没落し、社会不安は高まる。

 国連経済社会理事会の特別協議資格を持つアライア ンスフォーラム財団では「ROC(Return on Company)」 という指標の開発に取り組んできた。ROCはROE に代わる指標として、株主を含む全ての「社中」に 対する貢献度を示すことを目指している。

 株主以外の社中のメンバーに何らかの犠牲を強いて 営業利益を上げるのではなく、社中全体の付加価値 を大きくすることで株価が上がる、企業価値が上が る指標が開発されれば、ESGの掲げる理念も実現に 向かう。




  • 2014年ブータンビジネスフォーラムに参加
    トブゲイ首相と会談する原様と徳田代表

  • ホストタウン寄居町が決定した頃の上田埼玉県知事(左)
    徳田ブータン名誉総領事、原丈人様と会談

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